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TAIKING×土屋太鳳 オフィシャル対談インタビュー「ふたりのRules」公開

2022.09.29




ソロプロジェクト始動から1年、Suchmosのギタリスト・TAIKINGが1stアルバム『TOWNCRAFT』を完成させた。心地よく聴き手に寄り添う楽曲が揃うアルバムの中でも異彩を放っているナンバーが、俳優・土屋太鳳とのコラボレーション曲「Rules feat. 土屋太鳳」だ。

TAIKINGにとって初めてゲストをフィーチャリングに迎えたこの曲。土屋太鳳にとっても、他アーティストへのフィーチャリング参加は今回が初となる。歌詞も二人の共作だ。お互いが思っていることや感じていることを共有し、コミュニケーションを重ねながら作詞を行ったという。

制作の背景にはどんなものがあったのか? 二人に語り合ってもらった。


――今回のコラボに至る最初のきっかけは?


TAIKING:最初は、Suchmosが活動休止になって、僕が自分自身でソロ活動を始めるにあたって、バンドではあんまりやってこなかったフィーチャリングをやってみたかったというところからですね。スタッフと話をしていた中で、土屋太鳳さんという案が上がってきた。最初は音楽家の中で考えていたんですけれど「こういう角度もあるか」と思って太鳳ちゃんの歌っている曲をいろいろ聴かせてもらったら「声、めちゃくちゃいい」と思って。「太鳳ちゃんどうでしょうか?」って言ったら、まさかのオッケーが返ってきた。そういう感じでした。


――土屋さんは、お話を聞いての最初の印象はどんな感じでしたか?



土屋太鳳(以下土屋):最初は「え? 私?」って感じでした(笑)。「ほんとに?」って3回ぐらい聞き直しました。大丈夫かなと思ったんですけど、何事も出会いなので、挑戦してみようとなりました。もともと自分自身の声にコンプレックスがあったということもあって、不安ではあったんですけど、そういうコンプレックスは仕事でしか変えていけないと思っているので。自分が普段CMや映像でそんなに求められなかった、ちょっと低めの声を音楽を通して引き出していただいて。新たな自分を見つけることができて、とても貴重な経験でした。



――TAIKINGさんは土屋太鳳さんの声のどういうところに魅力を感じたんでしょうか?

TAIKING:言葉を発する時の発音の感じがめちゃくちゃいいと思ったんですね。細かく言うと、子音がすごくはっきり聞こえる。あとはブレスがすごい色っぽいと思って。だから「Rules」でもそういう息の出方がセクシーなところを活かそうと思いました。ただ、声が高い印象があったから、低いトーンでやったら、もっと色っぽい感じになるんじゃないかなっていうところがあって。



――それは最初からイメージしていた?

TAIKING:そうですね。低い感じがいいなって。あとは曲のディスカッションをしてる時に言葉を張り上げるより、置いていくような、話していくような曲にしようという話をしていたのもあって、抑えた方向にフォーカスしたというか。あとは僕の声質が男性の中では高いタイプだから、高い男性と低い女性のマッチングって、どうなるんだろうって思って。実験的でもあったけど、どこか中性的な雰囲気になったと思うし、面白かったですね。



――土屋さんとしては、TAIKINGさんやSuchmosというバンドについて、どんなイメージを持っていましたか。

土屋:私が言うのはおこがましいんですけれど、音楽性が高くて、ちょっとロック魂を感じる、でも不思議な切なさがあるような音楽というイメージです。



――土屋さんはこれまでミュージカルや劇中で歌うことはあったと思いますが、今回は曲作りにも参加しているわけで、それまでの音楽活動とは気持ちも違うんじゃないでしょうか。

土屋:そうですね。歌う時の心情を考えると、作品の中で歌っているときは役のイメージで歌っています。歌っている人は自分そのものではないので、これまでは土屋太鳳という歌手としての感覚はあまりなくて。けれど、決められたキャラクターで歌うのとはまた違う面白さがありました。声のトーンも、自分の心がふっと出る時にすごく近かったので。



――曲作りにあたってのディスカッションがあったとおっしゃっていましたけど、どんな感じだったんですか?



TAIKING:まず、制作に関わっていただくかどうかっていうラインですよね。例えば、僕がバキバキに曲を仕上げちゃって、それを歌ってもらうだけというのもある。ほとんどのフィーチャリングはそうだと思うんですけれど、でも、せっかく職業の枠を超えて一緒にやるんだったら、曲を一緒に作ったり、真っさらな状況でゼロからイチを作るのを一緒に体験できたらいいなと最初に思ったんですね。だったら一緒に歌詞を書きたいなと思って。おこがましいですけど、音楽をやる楽しさみたいなものを太鳳ちゃんに少しでも知ってもらえたらというか。そういう風に思って「一緒に歌詞を書いてみないですか?」って話をしました。




――そこから実際に会っていろんな話をした?

TAIKING:そうですね。そこでいろんなキーワードを出していって。今自分はこういうことを思ってるということだったり、曲の雰囲気だったり。トラックのほうが先にできたので、「このトラックだったらこういうことを歌うのもいいかもね」みたいな話から、キーワードを一緒に出していった感じでしたね。



――トラックはどういう感じで作っていったんでしょうか?

TAIKING:最初、どういう曲がいいかなって考えた時に、僕の中で勝手に、一緒にフィーチャリングするなら海がいいって思ったんですよ。ざっくりとしたイメージですけど、とにかく海のシチュエーションが思い浮かぶような感じの曲がいいなと思ったので。そういうトラックに仕上げました。



――土屋さんとしては、そのトラックを受け取っての印象はどんな感じでしたか?

土屋:すごく素敵な曲でした。TAIKINGさんが海の近くに住んでいるとか、いろんなことを聞いた上で聴かせていただいて。最初はもう少し夕方っぽかったんですよね。夜に聴いた時にホッとするような曲の雰囲気も聴いてみたいですとお伝えしたら、じゃあ、ちょっと作っててみますって言ってくださって。それを聴いたら「こういう音楽が聴きたかったな」という感じでした。自分の心がのんびりしたかった、漂いたかったというのがあったので。

TAIKING:「Rules」はこの完成系になる前、もうちょっとアッパーな曲だったんですよ。海っていうカテゴリーからは外れてなかったんだけど、どちらかと言うと明るい曲というか、夜にボケっとしながら見る海というよりは、夕方にバーっと車で行くみたいな海だったというか。

土屋:それもすごい素敵でした。

TAIKING:でも落ち着いた感じのも作ってみようかということでこの形になったんです。

土屋:私もすごく海が好きなんです。小さい頃から父がサーフィンをやっていたのもあって、海が身近だったので。なにかあると海に行きたいって思います。なので、曲の空気感もすごく好きです。




――歌詞を共作していくにはあたっては、どんなやり取りがあったんでしょうか。



TAIKING:海というキーワードが共有できてたから、あとは今自分が思っていることだったり、表現したい言葉を出していって。もちろん「波」とか「潜る」というワードも出てくるし、それが自分の気持ちとリンクしてるような感じもあって。海っていう、得体の知れない液体の中に自分の感情が溶けていくような表現もできたかなとも思いますし。沢山ディスカッションしましたね。結構不思議な作り方だったと思います。

土屋:TAIKINGさんと私で「自分が孤独を感じる時ってどんな時だろう?」とか「海に行きたくなる時ってどんな時だろう?」とか、いろんなことを話して。

TAIKING:そうそう、そういう話もしたよね。

土屋:目的とか理由じゃなくて、行きたいから行くんじゃないかなみたいな話になって。そこに行けば友達に会えるとか、別に何をするでもないけどって。そういうところから、自分たちの今の気持ちを伝えたりして。曲に気持ちを閉じ込めていったような、不思議な作り方でした。

TAIKING:説明するのが難しいんですよ。ふわっとできた感じがしますね。「ああじゃない、こうじゃない」って練り上げて作っていったというより、浜辺に落ちている貝殻を拾い集めて「これいいかな」「これいいかも」って置いて並べて、一緒に並べて見て「うん、オーケー」みたいな感じだったから。作り方が異色だった。

土屋:サビの「Only we know the rules」っていうところは、TAIKINGさんが書いたんですけれど、あれはどういう時に思いついたんですか?

TAIKING:なんか、自分たちしか知らない場所って、素敵じゃないですか。身内ネタっていうのが結構好きで。他の人にはわからないけど、ここだけでクスっと笑えるっていう。それって、仲間意識というか、お互いのことをわかり合ってるから面白いわけで。そういうのがすごい素敵だなって思ってて。一緒に歌詞を書きながら「こういうキーワードいいよね」って言っているときに、それを感じたんですよね。





――TAIKINGさんの中で「Rules」という言葉はどういう象徴なんでしょうか。



TAIKING:自分たちしか知らないルールみたいな感覚かな。そういうのが好きなんですよね。自由を歌うよりも、縛りとか範囲があった方が自由があるように感じていて。自由すぎるのって自由じゃないというか、ルールの枠の中にこそ自由があると思っていて。歌詞を書いている時がそうだったんですよ。海というキーワードがまずあって、そこに対してみんなで言葉を紡いでいく。そういうゲームのルールみたいな感じだったという。どっちかと言ったら、制作の過程を曲名にしちゃった、みたいな感じかな。

土屋:ルールがあった方が苦しいけど、でも生まれることが多いというのはすごくわかります。

TAIKING:自由すぎると自由が全然楽しくないんですよね。かといって、ルールを破りたいわけでもなくて。枠内で最大限楽しむとか、試行錯誤するとか、そういうのがドラマを生むというか、仲間意識を作れるような気がします。




――最初に土屋さんの声の魅力として色気みたいなところがあるとおっしゃっていましたけれど、これを曲の中でどういう風に出そうと思いましたか?

TAIKING:まずはキー設定ですね。ちょっと無理っていうところのギリギリまで低くして。

土屋:低いですよね。

TAIKING:すげえ低いのよ。俺、母ちゃんにも「ちょっとあんたさ、太鳳ちゃん声高いんだから、やりすぎ」みたいに言われたりとかして(笑)。ただ、テクニカルな話になるんですけれど、低い声って、言葉を発した時に吐息も出さないと出ないようになってるんですね。ブレスだったり、呼吸の仕方だったりがすごい色っぽいなって思ってたから、そこをより言葉と一緒に吐息が出るような感じにしたいというのは思ってました。

土屋:息を多めに出さないと低い声が出ないので、とても配活量が鍛えられました。あと、「Only we know the rules」と歌ったあとに、ブレスが入っているんですけどーー。

TAIKING:あのブレスだけ音量上げてるの。

土屋:やっぱそうなんだ! 私、こんなに大きくブレスしてたんだっけ?と思ったんです。




――聴いた印象ですけれど、色気はすごく感じるんですが、不思議にセクシャルではないんですよね。デュエットだけど男女の関係の感じはあまりなくて、どちらかというと仲間のような感じというか。

TAIKING:最初に歌詞を書いている時も、そういう話もあったもんね。俺、文才がマジでないんです。小説も人生で1冊も読んだことないんですね。すごく自信なくて。で、言葉を紡いでいたら、すごい恋愛っぽくなっちゃって。ちょっとやりすぎだよねみたいな感じで調整したっていうのもあったから。それもあって、セクシャルっていうところが薄まっているのかもしれない。




――男女のデュエットって、お互いの距離を詰めていたり、恋愛の駆け引きだったり、そういうのを歌ったタイプの曲も結構あると思うんですよね。でも、そういうのはなくて。夜の海で、風が吹いていて、いい時間を過ごしているくらいの情景が浮かぶというか。心地良さだけが、テイストとして残っている感じがします。

TAIKING:不思議ですよね。気持ち良さだけが残る、というか。

土屋:絶妙ですよね。

TAIKING:これは狙ってやれるものじゃなかったんで。情景描写が多いからかなのかな。「愛してる」とか、ベタベタな言葉が入ってないというのもあるのかもしれない。

土屋:見えない何か、みたいな言葉が多いですよね。

TAIKING:たしかに。ふわっとしてるんだけど、なんかわかる、みたいな。




――実際に歌ってみて、声を重ねてみての印象はどうでしたか?




TAIKING:俺は声が高かったし、太鳳ちゃんは無理やり低くしてもらったし。中性的な感じがあるんですね。男と女というよりは、中性的で、いい意味での違和感みたいなものを作ってるのかもしれないですね。

土屋:すごく温かい、漂うような歌になっているなって思います。何かを込めたとか、意味があるかないかということよりも、そこに漂っていることに寄り添うというか。だからこそ、いろんな人たちに聴いていただけるんじゃないかなと思います。



――ちなみに、この曲は「SWEET LOVE SHOWER 2022」で初披露されましたが、フェスの出演はどうでした?

土屋:フェスに行ったことも初めてだったんですけれど、素晴らしかったです。とてもいい空間で、夢の中にいるような感じで。自然の中、雨の中、沢山の人たちが聴いているのが、すごいなって。

間宮祥太朗くんとかフェスが好きな友達にフジロックのことをよく聞いていて。「どんなもんなんだろう」って思ってたんですけれど、百聞は一見にしかずでした。行ってみないとあの素敵さはわからないなと思いました。

TAIKING:結構、近々に決まったんですよね。土鳳ちゃんが出てくれることが決まったのが8月になってからで。まさか山中湖にまで来て歌ってくれると思ってなかったから「え、そうなんだ、マジか」って感じになって。そこから曲順も全部練り直して、間違いなくハイライトになるからここのタイミングがいいんじゃないかとか話し合って。緊張しましたね。普段のライブだと自分とバンドのメンバーだけだから「よっしゃ、行くぞ!」って、部活みたいな感じのバイブスで乗り込むんだけど、太鳳ちゃんが来るということで気持ちは変わらなかったけど、ひとつキュッとしたものがあって。初挑戦だったから緊張してました。




――では、最後にお二人に聞かせてください。まず、土屋さんにとって、フィーチャリングのコラボの経験はどんな経験になりましたか?



土屋:もっと音楽を知りたいと思う経験になりました。TAIKINGさんにはTAIKINGさんの心の表現の仕方があって、人の楽しませ方があって、そういうものに触れることで、自分の心もとても豊かになるので。これからもっといろんな音楽を知って、またTAIKINGさんとコラボする機会があったら、こういう音楽を聴いてきましたとか、こういう声を出せるようになりましたとか、そういう風に自分を発揮できるようになりたいなと思うようになりました。




――TAIKINGさんは1stアルバムも完成して、ソロプロジェクトのファーストステップが形になったタイミングだと思います。アルバムでやれたことと、その中でこの曲の位置づけに関してはどうでしょうか?

TAIKING:感覚的なんですけれど、バンドの時はみんなで作るというのがテーマで。最初にソロ活動を始めたのは2020年のコロナ初期で、その年の夏ぐらいにバンドが止まるかもみたいな兆しが見えたぐらいだったんですね。その時にメンバーに会えなかったから、各々で曲を作って、会えるタイミングになったらみんなで聴かせ合おうみたいな話をしていたんですけれど、それを聴かせることなく休止まで行っちゃったんで。自分の中で曲を沢山書いてたのが水の泡になっちゃったと思った感触があったから、最初から自分で歌うって決め込んで。始めたときは自分のエゴの塊みたいなものがあったんですね。で、いざ自分1人でやってみると、やっぱめちゃくちゃ大変だし、時間もかかったけれど、それがある程度アルバムで表現できたなと思っていて。だからこそ、次はたとえばライブの時に弾いてもらっているミュージシャンにレコーディングでも弾いてもらったり、誰かと一緒にやりたいなと思っていて。そういうところの、最初のステップになった曲というか。




――全部一人でやっていくんじゃなくて、仲間とか、いろんな人と一緒にやってみたいと思うようになった。

TAIKING:そうですね。自分の殻も破れてきて、外に出て、いろんな人と会って作ってみたいと思うようになった。いろんな出会いがあるかもしれないし、やってみないとわからない。そういう好奇心みたいなものだけが、ポンってあるような感覚があるというか。『TOWN CRAFT』の中の「Rules」というポジションで考えると、そういう風にやってみたいと思うようになった、すごく大きな一歩だったと思います。


――次へのイメージがもう広がっているわけですね。

TAIKING:とにかく自分の活動は楽しいものにしたいなと思ってますね。もちろんクールで格好いいものも好きなんですけど。もっと親しみやすい雰囲気のものというか。寄り添えるような、友達みたいな感覚の音楽を作っていきたい。それがTAIKINGのソロとしての一つの目標なんで。そういうものを、いろんな人を招いて作っていきたい。そんな風に次につなげたいなと思っています。

TAIKING:とにかく自分の活動は楽しいものにしたいなと思ってますね。もちろんクールで格好いいものも好きなんですけど。もっと親しみやすい雰囲気のものというか。寄り添えるような、友達みたいな感覚の音楽を作っていきたい。それがTAIKINGのソロとしての一つの目標なんで。そういうものを、いろんな人を招いて作っていきたい。そんな風に次につなげたいなと思っています。




Text by 柴那典

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